予想のコツ

パドックの見方〜気性、トモの張り、毛ヅヤ、首〜

パドックの見方〜気性、トモの張り、毛ヅヤ、首〜

競馬で馬券を購入する際、パドックが重要、という意見を耳にします。

パドックとは、出走する馬たちがレース前に騎手を乗せて軽く歩く「お披露目会」のようなものです。

JRAの競馬用語辞典では、パドックは以下のように解説されています。

各競馬場では発走前に当該レースに出走する馬が、装鞍所からここに入り、この中を厩務員にひかれて周回する。下見所ともいう。

ファンはここで馬の状態を観察できる。本馬場にむかう前に騎手が乗り、ひと回りする。

出典 : JRA「パドック(競馬用語辞典)」

また、広い意味では小さな放牧場や運動場を指します。

パドックで、馬の調子を見極め、馬券購入のヒントにする、というのは、競馬の世界で一般的に言われることですが、パドックの際に、一体どの部分をチェックすればいいのか、パドックの見方、というのがよくわからない、というひとも多いのではないでしょうか。

このパドックの見方について、元JRA騎手で競馬評論家の細江純子さんは、ポイントを絞って次のように解説しています。

①気性

まず一つ目のパドックの見方として注目すべき重要な点は、その馬の気性面です。

今日が、気性が荒いかどうか、落ち着いているか興奮しているか、というのはレース展開にも大きな影響を与えます。

細江純子さんは、パドックで本日の気性の様子が分かるためには、犬と一緒で、「普段の様子がわからないとわからない」と言います。

一見、パドックでは興奮しているように見えても、その馬からしたら平常通りという可能性もあります。

逆に、元気がなさそうに見えても、これが普段と同じく落ち着いているという場合もあり、パドックで気性を見分けるには「普段との違い」を考慮する必要があります。

それでは、普段を知らない、という場合には、どうすればいいのでしょうか。

細江さんは、パドックで馬を曳いている「ひと」を見るといい、と言います。

馬を曳いているひとは、その馬の世話をしていつも一緒にいる「厩務員さん」なので、たとえ馬がすごい暴れているように見えても、この厩務員さんが、特に焦りもなく、今日も元気そうだ、というような雰囲気なら、「いつも通り」ということです。

一方で、曳いているひとが焦り出したり、一人で曳いていたのが二人になったら、いつもよりもテンションが高い、ということを意味し、レースで気性面での心配材料が増えるな、ということになります。

また、厩務員さんの曳いている手が、ピンと伸びているようなら、馬自身が前に行こう、前に行こう、としている様子を指し、「馬自身が行きながら、厩務員さんが適度に抑えている」という程度が、細江さんは好きな調子だと言います。

この辺りは、個人での見極めが必要になってくるのでしょう。

②トモの張り

次に、パドックで注目する点は、トモの張りです。

よく、競馬の用語で、「トモの張り」という言葉を目にしますが、一体トモとは、どこの部分なのでしょうか。

画像 : 投資競馬で覚えておきたい用語【トモ】

馬のトモとは、ちょうど腰からお尻、後ろ足にかけての部分のことを意味します。

馬体を大きく2つに分けて前躯〔ぜんく〕、後躯〔こうく〕と呼ぶが、その後躯のうちの腰部、臀部、後肢のこと。

出典 : JRA「とも(競馬用語辞典)」

トモの張りとは、この「トモの部分が、しっかり張って筋肉量があるかどうか」を指し、この点が、その馬の良し悪しや成長度合いを決めるポイントの一つになっています。

トモがしっかりしているかどうかを見る際は、横からよりも、後ろから見るとよい、と細江純子さん。

後ろから見た際に、まだまだの場合は、マリリン・モンローのようにお尻が左右にふらふらと揺れるそうです。

また、以前は少し前かがみになるような、だらだらと重心が前に落ちていた馬が、しっかりと体を起こして立ってきたら、トモの成長が見られるサインとなります。

③毛ヅヤ

もう一点、細江さんがパドックの見方のポイントとして挙げていたのが、馬の毛ヅヤです。

よく「毛ヅヤがいい」という話も聞きますが、一体毛ヅヤで、見た目が美しいという以外に何が分かるのでしょうか。

実は、毛ヅヤは、その馬の「内臓の調子や栄養の状態」を教えてくれます。

馬の栄養、健康状態が端的に現われるのが毛づやである。つやつや光って見えるのは栄養十分、運動状態もよいし内臓の疾患もなく、健康状態であることを示している。不健康な馬は毛につやがなく、毛が立ってボサッとしている。

ただ毛づやは手入れの良し悪しによっても違うので、パドックで馬を見た場合、本当に毛づやが悪いのか、手入れが悪いのかを見極める必要がある。

出典 : JRA競馬用語辞典「毛づや」

確かに、人間も食がしっかりし、便通がよいと、肌ツヤがよくなります。

人間と同じように、馬も、体調が毛づやなど外観に現れ、細江さん曰く、「普段よりも毛色が濃く見えるとよい」と言います。

パドックで、毛ヅヤ(毛色が濃く見えるかどうか)に着目すると、狙いの馬のうち、この馬はちょっと調子が悪そうだ、良さそうだ、というヒントにもなるかもしれません。

④水平首

一方、ツイッター上では、競馬のパドックの見方のコツとして、馬の「首を見るとよい」と語っている方もいます。

パドックでは、「水平首」が重要な判断材料になると言います。

歩行の際、「馬の首が、水平より低くなっていると、その馬がリラックスしている」という説があるようです。

首の保持位置に関しては、経験の少ない馬ほど首の位置が高い(水平より上の)割合が多く、経験が増えるほど首の位置が低い(水平以下の)割合が多くなることが明らかになった。

放牧場での観察結果より、リラックスしている馬では歩行中、首が水平以下に保持されている割合が圧倒的に高いことがわかった。

首の保持位置は視界の広さに関係していると思われる。なぜなら、首の高さで視点の高さが変わるからである。見る動作に関連した頭部の動きの頻度も、首が高い位置にある時に多いことがわかった。

つまり緊張、不安を感じている馬で首の位置が高くなるのは、周囲に注意を払っているためだと考えられる。

出典 : 緊張や不安に伴う馬の表出行動に関する研究

不安や緊張に襲われていると、少しでも広い視野を確保し、周囲に注意を払うために、首が高くなるようです。

首が水平以下に保たれているということは、リラックスし、集中状態にあるということなのでしょう。

もちろん、これも馬の強さというより、その馬がどれほどその馬自身の実力を発揮できるか、ということと関連しているので、即座に馬券予想に活きるかどうかは分かりません。

ただ、この「水平首」というのも、パドックの見方の一つの参考材料になるかもしれません。

パドックは意味がない?

逆に、パドックは意味がない、という声もあります。

実際、武豊騎手、和田竜二騎手、M.デムーロ騎手の三名の競走馬のスペシャリストも、パドックを見ても分からない、意味がない、といった発言を行ったことで過去に話題になっています。

しかし、この「意味がない」というのも、「初めて見た馬だと分からない」という話で、自分が乗っている馬なら、その状態の良し悪しがはっきりと分かるそうです。

同じように、一頭だけをずっと追いかけている場合には、パドックも意味がある、と武豊騎手は言います。

では、素人がパドックで馬を見るのは、まったく無駄な行為……というわけでもなく、武豊騎手はパドックを予想に利用するのなら、1頭の馬を追いかけて「同じ馬をずっと見てたら良い」と話す。

確かにそれなら我々にも、何度か状態とレースの結果を比較することで、その馬の個性をある程度把握できそうだ。

武豊騎手からすれば「こういった歩き方をしている馬がいい」という共通パターン的なものも存在しないという。すべてはそれぞれの個性を認識することが、正確な状態を把握する最善の道ということなのだろう。

出典 : 武豊騎手「パドック意味なし」発言に仰天……馬券購入セオリー「完全否定」のトップ騎手たちが語るパドック必勝法とは

結局、馬には馬の個性があり、競走馬全体に当てはまる法則はなく、普段を知らないとパドックを見ても意味がない、わからない、という点では細江純子さんと同じ意見ということでしょう。

以上、気性、トモの張り、毛ヅヤ、首、という四つのポイントから考える、競馬のパドックの見方でした。